サッカー知らない人が手のひらを返しまくった末に知った楽しみ方の話
Twitterは自分でタイムラインを作りますので、ある程度は自分の興味と似通った人たちの会話が流れることになります。そんな中でも、昨夜はほとんどサッカーに関する話題一色のタイムラインとなりました。更に「色々と議論を呼ぶ試合内容」だったそうで、まともに試合を見ていない僕も何か言いたくなってしまう程でした。
今回、本当に「サッカー(スポーツ)の観戦の仕方」を全然知らなかった…… こういう考え・見方があるんだな、というのを短時間で色々と学べましたので、まとめてみたいと思います。
あくまで「サッカーのハンドならギリ分かる」レベルの無知な人間が、昨日のタイムラインに突然参加したという段階から始まる、ということを念頭にお読みください。オフサイド?いまだにわかってません。
★この記事では私のツイートを引用しますが、ものすごい勢いでテノヒラがくるくる回ります。ご気分を害される恐れがありますので、あらかじめご了承ください。
◆試合で起こっていたこと
タイムラインから僕は瞬間的に「世界最高峰の舞台とは思えないダルダルな試合が展開されている」ということを断片的に知りました。
勝負の世界においては、ひとつの駆け引きの形で「見栄えの良くないプレー」をあえて選択することは普通にあり得ます。それはサッカーに限らず、スポーツに限らず、戦術として僕も理解できます。
☆ほんとうに暇つぶしみたいなパス回し
☆得点で負けているのに(日本0点 - ポーランド1点)全く攻めない
こういう内容が段々と見えてきました。何らかの意図があってやっているというのも見えてきました。ここで僕が考えたことはコレです
僕はよくわかってないんすけど、ワールドカップって「興行ではない」んですよね?オリンピックみたいに。
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
観客側からすれば「スゴイ試合を見せてもらう代わりに金をはらう」形で、プロ選手は「スポーツだけで生きていけるかわりにスゴイ試合する」の利害関係だから成り立つんですよね。
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
でも、ワールドカップはたぶん違いますよね。知らんけど。
この時点で、僕はワールドカップをオリンピックのようなアマチュアスポーツ的(公営的な何か)だと勘違いしておりました。友人の指摘や、賞金額を知ることで、それは間違いだったと認識を改めます。
学んだことその(1):
ワールドカップはプロスポーツである
僕の中で「魅せること」というのはプロ選手に必要なものだと考えている部分があります。選手が移動中、ファンサービスで手を振ったりするのも、結局は「自分たちの食い扶持を守るための正当な活動」だと思うからです。どっちが上か下かという話ではなく、観客がいなくなれば彼らプロ選手は活動の場を失うからです。興行とはそういうことです。だからプロ選手は常に技を磨き、ファンを喜ばせるということ「も」やらねばならないのだと思っています。
逆にオリンピック選手は、純粋に技能を磨く「アマチュア選手」ですので、観客へサービスする必要は全くありません。結果こそ全ての世界だと思っています。
この段階での僕は、上記のような分け方でスポーツをとらえていました。
ですから、いくら「意図のある戦術」だとしても、ダルダルなパス回しで「明らかにつまらない試合をする」というのは、プロ選手としてどうなのか?と憤りを感じた訳です。
つまんねー試合で勝ちやがってっていう批判も全然アリだわな、興行なら。
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
オリンピック選手に「つまらねえ試合しやがって」と言う訳にはいきません。全力を出してもらう以外にないからです。でも、興行なら「試合つまんねーんだよ!」と怒る人が居てもいい。それは間違いありません。
◆試合の外で起こっていたこと
ワールドカップの1次リーグを突破するという話をそもそも理解していませんでしたので、僕はこの試合だけに注目した話だと思い込んでいました。(なのでダルダルパス回しの末にポーランドに勝ったのだと思い込んでいた)
リーグは総当たり戦というのは分かっていました。確かに得点数の少ない整数となるサッカーにおいては、リーグで同点になる可能性の方が高いです。ですから、単に勝敗以外の様々なポイントで勝ち抜けるチームを決定するルール、が色々と整備されているというのは不思議なことではありません。ですが僕はそれを知りませんでした。
日本VSポーランドの試合が開始される前の段階で、日本は1次リーグを突破できる可能性がありました。
それは「セネガルか日本か」という判定だったわけです。
具体的には……
☆得失点差、総得点数で同じ
☆互いの直接対決の点差
といったものが勘案されますが、両者はこれが同一でした。
そして、日本VSポーランドの試合の裏で行われていたのはセネガルVSコロンビアです。セネガルの得失点の数によっては、日本は「これ以上失点さえしなければいい」という状態となり、後は「反則によるポイント差さえ負けなければリーグ突破できる」という極めて限定的な条件が揃っていました。
これがフェアプレーポイントの差、とされるものです。
セネガルが頑張って得点を取ってしまったら結局はダメだった…… ということにもなるのですが、かといって日本も得点を取ろうと強気の攻めに出るかどうか、そういう選択の迫られていた瞬間だったようです。
試合の外で起こっていたことは、以上のようなことでした。
そして日本チームは……
☆セネガルはこれ以上得点しないことに賭ける
☆日本はできるだけ動きを抑えて、失点と反則を取らない
という選択をし、あのダルダルパス回しという試合内容を断行するに至った訳です。
この30分TLを見て学んだこと(手のひらクルックル)
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
・ワールドカップは「プロ選手」大会
・白熱した試合を求めた人は多かった
・今日までの時点で日本としては想定外すぎる勝ち点だった
・リーグを上がれる方策(今回の試合)が見えていた
・過去がむしゃらで失敗したという歴史がある
サッカーを見る観点で学んだこと(これもクルックル
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
・トーナメントを勝ち抜けるという政治的戦略がある
・次のリーグの高い難易度を避けるという考え方がある
・他試合の得点差を含めた「戦略」的視点の楽しみ方がある
本当なんも知らんかったわ
学んだことその(2):
リーグを勝ち抜くためのルールは得点以外にもある
◆監督って意味あるの?
僕のように普段スポーツを見ない人は、たぶんきっと正直こんなことを考えていると思います。「正直監督って何してるの?」と。結局は選手ありきでしょ! という風に考えてしまいがちです。
タイムラインを読んでいく中で、僕は上記の「試合の外で起こっていたこと」を知るに至りました。このおかげで、ダルダルパス回しをするに至った理由と、選択と、賭けを知れました。
これは「明確な選択」です。つまり、誰かが何かを選択して実行を指示しなければなりません。これこそ監督の仕事です。
タイムラインを見ている中で「ドーハの悲劇」「マリーシア」という言葉も知りました。それぞれ、攻めすぎる必要のない時に試合を継続した結果失点したことと、どんな手を使ってでも勝てばよいとする視点のことを言います。
過去の日本サッカーを知っているファンとしては、その失点さえなければという大きな悔しさを知っているようです。つまり、それこそが日本の弱点であったという見方となります。
日本はあらゆる面でクリーンなチームとも言われています。今ワールドカップにて日本が残している記録の中には、レッドカードを受けていない試合数の記録更新など、実は凄いものもいくつかあるそうです。
そんな日本が「マリーシア」的に行ったのが、今回のダルダルパス回しだったのだとすれば、それこそ明確過ぎるほどの「選択」だったのだろうなというのが想像できます。
僕のように何も知らない人物が、ただ単発でこの試合を評価すれば「つまんねー試合!」ということになります。しかし、これまでのことを知った上で見ているファンの視点に立てば、「監督がこの瞬間に何を選択したか」を感じながら試合を観戦できたことになります。
彼らファンの一部にとっては、今回の試合こそ「日本チームの成長」として映ったというのも、それならば頷ける話です。
今回の戦術をとったのは「日本チームの成長」と表現する、長くサッカーファンだったであろう人のツイートも流れてくる。なるほどなあ…
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
さらに「マリーシア」という単語を知った。そして日本は良くも悪くもこの「マリーシアがド下手」と言われ続けた国だということも知った。
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
てことは、その歴史を知って見ていたファンは「まさか日本がここでマリーシア勝負に出るのか!」という興奮を持ってもおかしくないんだな。
知ったことを置いた上で見てみると「一見エキサイティングではない試合」を見ながら「どんだけギリギリの賭けにでたんだよォォ!」というエキサイティングを体験していたサッカーファンがいる、ということなわけか。
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
これは俺が無知でわからなかった。
学んだことその(3):
日本は「マリーシア」が下手という評価があった
その上で日本は明確な選択として今回の試合を行った
◆国の情勢が直接反映されるスポーツ
タイムラインで色々とテノヒラをくるくるさせていたら、友人から連絡がありました。それは「南米のような貧富の差が激しいところでは、またサッカーに対する取り組み方のリアルは日本と変わってくる。そういう視点も含めてみると、また違った面白さの観戦ができるかもしれません」と。
賞金額を見た時に、その通りだなと感じました。過去、オウンゴールを許してしまったコロンビアの選手が帰国後に射殺されてしまった事件なども知ることになり、いくら「ゲームとリアルを混同するなよ」と思ってみても、そこには冷たい現実があります。
試合の中と、試合の外と、そしてサッカーの外のことも含めて観戦する立場の人がいる。これは僕のように無知の上で、単発の試合を見ているだけでは絶対に見えてこない部分がでてきます。
当然、そうした知識や意識の差があるのがファン層というものなので、どちらがダメということではないにしても、今回のタイムラインの騒々しさは僕にとってものすごい勢いで考えを改めさせてくれる機会となったのは間違いありません。
◆「つまらない」と「ハラハラ」が同居する
ダルダルパス回しの時間は、おそらく誰もが「つまらない時間だった」という感想をもつと思います。その中で、友人から「つまんねえという思いとハラハラする思いが同居してた」とコメントされました。
長いサッカーファンでも、いまだに意見が割れているのを見るに、そんなに簡単に割り切れる試合ではなかったのが分かります。だから、誰もがモヤモヤしている。
プロとして長い目でみたサッカー文化への影響を考えれば「それでも魅せようとする」価値を大切にしようという部分は否定できませんし、過去の失敗を学んだうえでの勝利(リーグ勝ち抜け)ということであれば正しい選択だったとも言えますし、これらがとにかく全部合わさったようなものが、今回の試合なのだと思います。
だから……
☆つまらない試合をしやがってという批判もアリ
☆過去の失敗を思い出せと叫ぶのもアリ
☆後継のサッカー文化を考えて熱く戦えというのもアリ
色んな批判はあるものの、どれも間違いじゃないんだと思います。
試合というのは色んな予測や計算を準備して臨むものだと思いますが、当然それらは全て思い通りに行くものでもないし、そもそも計算自体に「願掛け」が含まれてたりしてもしょうがないと思います。(一流の世界を相手にしているのだから)
勝負をするにあたってすべての計算通りにいかないのは当然かつ「用意した計算が必ずしもすべて論理的でなきゃいけない」訳でもないんだよな。そんなのは無理だ。確かに。
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
サッカーというものに詳しくなるほど、今回の状況を知っているほど、こうした計算や準備、判断というものが「見えた上で」観戦できるのでしょう。
だからこそ、その瞬間は「つまらない」ものであっても、その選択は果たして上手くいくのかという「ハラハラ」はあるという状況が成立するのかもしれません。
あれ?これつまり今日の試合は結局、すっげーモヤモヤしまくったというそのものが「すげえドラマ性あった」ってことじゃん。面白い人にはマジで面白かったんじゃねえか今日は。日本にとっては結果的に良かったわけだし。
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
◆理想の試合とは何か?
ここではじめの方の話題に戻ります。
プロならば「魅せる試合」をするべきだ
と僕は考えていました。これは本当に正しいのでしょうか?
憧れによって業界を目指してくれる若者がいなくなれば、その業界は死滅します。これはあらゆる業界において鉄則です。若い人は宝物です。
興行という側面を広くとれば、やはりプロスポーツ選手は観客を魅了しなければなりません。しかしながら、それは「単一の試合の、ある瞬間によって生み出されるものなのか」という問題があります。
スポーツは人間と人間がぶつかるものです。人間である以上、時間・歴史というものは切り離せません。選手やチーム同士の相性や戦績によって、観戦の味も大きく変わってきます。エンターテイメントが大事だと語るのならば、そのあたりを外した視点は嘘になります。
つまり、単一の試合・ある瞬間だけが面白さの全てではない、のがわかります。
それは小手先の技術しか見ていないとも取れますし、ほとんどロボットを見ているのと差がありません。人間だからこそ、どういう強み・課題を持っているか、成長と変革を辿ったのかがあります。そして、試合の一瞬においてそれらが凝縮・反映されたものが現れた時に、ファン達は「意味」として価値を感じ、エキサイトします。
だから、結局は「ルールの中において勝てばよい」のだと今なら思えます。
でも、日本の「マリーシアが下手だった」という弱点や、できれば面白い試合を見たかったというのがあるからこそ、あのダルダルパス回しのプレーにいろんな感情が蠢き、話題となったのは間違いありません。これこそ、エンターテイメントだと思います。試合はつまらなかった、だけど、日本のチームとしての議論が巻き起こった…… 現にファン達が大騒ぎしているのは、興行として大成功なのではないでしょうか。
◆Twitterがなかったら
最近のTwitterは「誰かを叩く」という方向に強く働く印象があります。今回のタイムラインでも「簡単に"正々堂々と試合しろ"なんて誰が言ってんだコラ」みたいな、威圧的なツイートはたくさん見かけました。
なるほどその通り、僕のような無知の者が簡単に発したツイートを読めば、いろんなことが見えているファンからしたら憤るのは仕方ないことのように思えます。
僕は昨晩のたった1時間、タイムラインに張り付く中で上記のことを学べたし、想像の範囲を出ないにしても「分かった上で観ていたら、こんな風に面白さを感じる人もいただろうな」という部分が広がったと自覚しています。
仮にこれが、たまたまHUBのようなスポーツを観戦できるバーみたいなところに居たとして、たまたま試合をみていたら「つまんねー試合だなオイ」と言ってオワリだったと思います。
そして、そんな反応をしている人に対して、お店に居る他の客がわざわざ僕に「お前わかってねーな、そうじゃあねえんだ……」と、上記までのことを解説してくれるでしょうか。そういう世話焼きの人もいるかもしれませんが、かなり難しいと思います。
仮にこの試合を偶然HUBか何かで観てたら俺は多分「つまんねーBoo!」って言ってた。でも、今日の話のような直接目に見えない部分をアツく語るやつが隣にいたら、スマホで別試合をチェックしつつハラハラしたんだと思う。勝負事ってのは、知らないとうまく楽しめないな。
— トラスク (@Trasque) June 28, 2018
誰しも、自分が無知であることを認めるのは結構苦しいことと思うんですが、いろんな解説や視点に触れていって「あ、俺ちょっと間違ってたな」と、ダサいと思いながらも反省ができます。
Twitterってひとつのツイートを見ると、さも「その人の思想がそのように固まっている」と読んでしまいがちなような気がします。だから、批判もいきなり強いものが多くなっていく。(僕自身もこの傾向がかなり強く、自省しつつこれを書いています)
サッカーのタイムラインにおいては、僕のような無知の人も相当数に居たと思うので、ワガママを言わせて貰えば、ぜひ一つ一つ理解する段階を頂ければなと思う訳です。自分もすぐ「このクソが!」と批判するんじゃなくて、段階を踏みたいと思います…… マジで。
こういう人、本当にいっぱいいると思うので、僕個人としては昨晩のタイムラインのようにいろんな人がいろんな意見をギャーギャー出しまくってくれているのは、本当にありがたい限りです。
ちょっとサッカーに興味が湧きました。せっかく出場となった決勝トーナメント、微力ながら応援したいと思います。
長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。